形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝(17)       

ETRURIA(エトルリア)の民族

 

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(33)ETORURIA金製イヤリング、水晶、マラカイト;ヴルチ、イタリア(BC6世紀末~BC5世紀初頭)
 
 
写真(22)横たわるシレノスが表された飾り板;ヴィニャネッロ、クーバ墓地、第七号墓、イタリア(BC480年頃)と同じイタリア・ラツィオ州(Lazio)で見つかった、同じ頃のイヤリングです。上部水晶の石刃(石包丁)を取り巻くのは、六弁で突起を持つ花弁、柘榴の花です。
 

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(9)Wikipedia

 

その外側は「ブドウ」を暗示する、エトルリアの「森の神・Silvano dio delle selve」、(DIZIONARIO DELLA LINGUA  ETRUSCAによる)と二重笛を吹く人物{参照・写真(28)カルロ・ルスピによるタイクィニア、トリクリニオの墓・葬祭絵画複製画(BC470年頃)}が取り巻く。下部の石刃(石包丁)はドングリに取り囲まれ、「森の神・Silvano dio delle selve」に象徴される「豊饒の森」が示されています。
 
 

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(22)ETORURIA横たわるシレノス(?)が表された飾り石;ヴィニャネッロ、クーバ墓地、第七号墓、
イタリア(BC480年頃);実は、エトルリアの「森の神・Silvano dio delle selve」
 
写真(22)横たわるシレノスが表された飾り板に現れた、「森の神・Silvano dio delle selve」、「野ブドウの花」、「カーネーション」、「ドングリ」と併せ見ると、両者に共通して、西アジア(特にコーカサス地方)由来のシンボルが使われているのが解ります。こうして見てみると、写真(22・33)の展示品は歴史的に重要な意味を持つことになります。エトルリアの「森の神・Silvano dio delle selve」はギリシャ神話の「Silenos」や、ローマ神話の「Silenus」になるわけですから、地中海世界の歴史を見直す必要があります。
塩野七生先生の「ローマ人の物語・ローマは一日にして成らず」(新潮文庫)の記述に面白い見解があります。それは、「エトルリアの南部、ラテン族の都市にいた「はぐれもの」の男達が、不毛の地・エヴェレ川左岸の湿地帯に、BC753年ローマを建国した。」との考えです。エトルリアの南部は今のラツィオ州で、BC2,000年頃ラテン人をはじめ多くのインドヨーロッパ語族が住み着いた場所とされています。「ラツィオ」は「ラテン」の語源「ラティウム(Latium)」に由来します。塩野七生先生の見解は正しいと思います。ただし、私は「はぐれもの」の男達とは考えていません。「エトルリアの南部、ラテン族の都市」を、ラテン人の男達が去らなければならない何かが起こったと思うのです。西アジア(特にコーカサス地方)由来のシンボルが多くを語り、コーカサス地方由来の摩崖墓が多く見つかります。つまり、ローマ建国とされるBC8世紀以前に西アジアからの人の移動がどうしても考えられるのです。次の展示品はその事実を語ります。

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(34)ETORURIA蛇の頭部のある銀のレベス:BC7世紀第一四半期

パレストリーナ、コロンベッラ、墓地、ベルナルディーニの墓、イタリア

 

 
 
 
 
 
 
 

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