形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

トピックス(8)Gleichenia japonica(ウラジロ)とズールーの概念

正月とウラジロ

 

f:id:blogwakujewelry:20161231200110j:plain

(1)Gleichenia japonica(ウラジロ);Weblio 植物図鑑

 

お正月が近づくと懐かしく思いだす光景があります。手足を気様に使い、いくつもいくつも「注連縄」を綯う父親の姿です。そして、小学生になった私は、兄達が担ってきた役割を引き受けました。一人で山に行って「ウラジロ」を取ってくるのです。「ウラジロ」が群生する場所は、兄達から教えられていました。村はずれの深い深い「西の谷」の崖に掘られた、道幅25cm位の山道を過ぎた山腹です。両手いっぱいに「ウラジロ」を取り、崖の道を注意深く戻った記憶があります。徳島県三好市、私が育ったところでは、「注連縄」に、「鏡餅」に、「ウラジロ」は欠くことのできないものでした。絶対に必要なものとして、その意味を考えることもありませんでした。

長い時がたち、いま、「ウラジロ」の表象するものを考えています。お米で出来た「鏡餅」はお米で出来て丸く「雨による豊穣(平衡)」を表します。それはまた同時に、「ズールーの円環・すべての物がそこから進化する家であり、大地であり、宇宙であり、大宇宙でもある相対的な空間」(マジシ・クネーネ)でもあります。

 

f:id:blogwakujewelry:20161231210848j:plain

(2)Gleichenia japonica(ウラジロ);Weblio 植物図鑑

 

f:id:blogwakujewelry:20161231210956j:plain

(3)Gleichenia japonica(ウラジロ);Weblio 植物図鑑

 

そして、「鏡餅」を重ね、「ウラジロ」を飾る行為はズールーの概念を表します。[角」、「コーカサスモミ」、「古代エジプトの儀式用パン」で見た「円錐形の表象」です。神に捧げる「山盛りごはん」や、「盛り塩」、「盛り土」の「円錐形」です。「円錐形」は「円環(一つの円環は一つの世代)」が重なるように発展した形状なのです。そしてもう一つ、「ウラジロ」はまさにズールーの概念「大きな統一体は、その中に極小の単位を含んでいて、その単位は集合させたものの複製となっている。」(マジシ・クネーネ)の形状をしているのです。小さな葉のパーツは、大きな枝を同じ造形のままに創り、さらに大きな「ウラジロ」を創っています。「小さな統一体から、大きな集合体への、相対的な成長の概念」です。

 

f:id:blogwakujewelry:20170101072305j:plain

(4)シダの新芽(マオリの言葉・コル(コル);ウィキペディア

 生まれ始めた「シダの葉」が相対的に、渦を巻いて成長しています。

 

「発展する渦巻き」のように渦を巻く「シダの新芽」も、大切な表象となっています。ウィキペディアによれば、「マオリ」では「コル」と呼び、神聖な象徴になり、ニュージーランドでは植物相のシンボルマークや、ニュージーランド航空ロゴマークになっています。最近ではニュージーランド国旗の候補に、「シダの新芽」をデザインしたコル・フラッグ(Koru Flag)、や「シダの葉」のデザインが挙がっていたことを憶えています。「マオリ」の歴史を考えると、古代より「シダ科植物」に重ねられた概念の大切さが良く理解できます。

 

さらに、その分布を見れば面白い事が解ります。「ウラジロ」の概念は縄文時代草創期以前から、日本列島に伝播していたようです。

幼き日の「ウラジロ」を思い、謹賀新年 2017

つづく

 

 

 

 

© 2019 JOJI WAKU Blog. All rights reserved.