形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

「羽子板、扇」が導いたこと(8)酉の市 ;氷川神社

 

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B(上段左)天寿国繍帳残欠:中宮寺蔵

つづいて上段左は、ゾロアスター教徒にもバラモン僧にも付き添晴れることなく、召喚された女神です。解り易い表象が二つ、「杵を着くウサギがいる 月」、そして「亀」。「亀」は誰が見ても、生殖表象が具象化したことが分かるはずです。生殖表象はアフリカ、西アジア、地中海、ヨーロッパはじめ世界に遍 在する、人類が持った最初の表象です。「亀」への具象化はインドで始まったことでしょう。のちにインドネシアのヒンドゥー教「スクー寺院」にみ られるような造形に展開します。雨が降ると、山を表象す寺院から「階段」を流れ落ちた「水」は亀に注がれ、「豊饒」を表象する。南米の各文明では「階段」 を流れ落ちた「水」は生殖表象そのものに注がれる、つまり、より古い時間軸が考えられる訳です。そして、円の生殖表象は四角の生殖表象に先んじます。四角 の生殖表象は観念的なもので黒海の「大洪水」に起因します。このあたりの「文様の誕生」はこの秋、文化服装学院・工芸科での集中講義でまとめます。そし て、「装飾文化史」に書きたいと思います。とにかく、「亀」と「水」は「生殖と豊饒」を表象するのです。また「階段」の意味は「うさぎ」に繋がります。

 「杵をつくウサギがいる月」 ウサギはその繁殖力によって、「多産」のシンボルだと思っていました。しかし、それでは「杵をつく」意味が分かりません。最近見つけたのですが、ネットの 記事のなかに「The Cuniculus]=穴ウサギの言葉がありました。調べてみるとラテン語で、「Cryctolagas Cuniculus」=「旧世界産アナウサギ」になります。そして「Cuniculus Sistem」はラテン語からの英語で「エトルリアで考え出された分水システム」の意味になります。分水システムで穀物が多くなる、「杵をつく」くらい豊かに収穫でき る。つまり、「杵をつくウサギがいる月」は満月で円=「多産と豊饒の大地」の表象です。そして、もう一つ、お気づきですか?「分水システム」は治水・灌漑 のことです。分水嶺や分水神社の意味が明白になりました。「分水」=「治水・灌漑」=「ウサギの表象」となります。中国の伝説上の王は治水・灌漑で人々を 救った「兎」でしたね。「階段」は「穴ウサギの穴を使った灌漑された分水システム」、つまり「灌漑された段々畑」のことです。「段々畑」は「鬼伝説」と繋がるので「中段左」写真の範疇です。

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「世界一周ブログ;地球へ途中下車」を書かれている、ニックネーム:マインさんご夫婦のとられた写真です。アステカ文明;テオティワカン;月の神殿(手前)下にある、四角に丸の生殖表象、中まで「水」が行き渡るようになっています。ちなみに、向こうに見えるのは、水に浮かぶ四辺形(立方体=カアバ(ガーバ)神殿=方舟」。あまりにも見事に、この聖なる山の神殿群と、「階段」から流れ落ちた水に沈む「月の広場」を撮られているので、紹介させて頂きました。貴重な写真です。インドネシアのヒンドゥー教「スクー寺院」と同じ観念から生まれた「形而下の石」です。インドネシアからアステカ文明へ一つの「道」が見えます。

つまるところ、ここに召喚された女神は「アナヒーター」であり、バラモン教では「生殖と豊饒の女神;サラスヴァティー」です。仏教では「弁才天」になり、宗像三姉妹の長女;弁財天です。氷川神社「神池」に正対し、また浮かぶのは、バラモン教で「始源神」、「天空神」、「司法神」、「水神」の「ヴァルナ」と「生殖と豊饒の女神」「サラスヴァティー」でしょう。 つづく

 

 

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