形而下の文化史

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トピックス(4)岡崎市・瀧山寺「鬼まつり」

 

瀧山寺「鬼まつり」(4)

ヤクシーと薬師如来

 

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(14)薬師如来像

 

ブログ「Letuce's room」に筆者が瀧山寺・住職とお会いした時の、大変面白い話を紹介しています。瀧山寺を知るうえで参考になる記事がいっぱい書かれています。ぜひ一読をお勧めします。このブログ記事で私が興味を持ったのは、「薬師如来」を守る「瀧山寺・十二神将立像」についての情報です。「瀧山寺の十二神将は、武将だというのに、甲を付けていなかったり、半裸形であったり、裸足であったり、と不思議な二神将立像です。また山や法螺貝を持っている像もあり、とても珍しい。」。ここに現れている形態の意味は、瀧山寺の「薬師如来」が、山岳仏教の「天台宗」成立以前から存在していたことです。「山と法螺貝」は「修験道」を表し、更に、重要な事を暗示しています。「山」は「ヤクシー」が仏教で「山の神」なら、「ヤクシー」本来の意味で「豊饒の大地」であり、「法螺貝」は「渦巻」すなはち「大地を守る蛇」になります。「ヤクシー」は「地母神」であり、「十二神将」は「大地を守る蛇」なのです。「地母神」としての「ヤクシー」は、インドでもバラモン教成立以前、インダス文明までさかのぼります。「十二神将」が半裸形であったり、裸足であったりするのは当然です。黄金伝説展(18)・参照でエトルリアに現れた、コーカサス地方の「野ブドウの神」も「山の神」でした。古来、山は「豊饒の大地」なのです。

 

 

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(16)インダス文明(BC2,600~BC1,800)・地母神土偶;世界の博物館・講談社
 
「文明が農耕を基盤とするものである限り、植物のみならず人間の生と死を司る母神は、生命の源である大地の表徴であった。」(世界の博物館・インド文明のあけぼの)より
 
 

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(17)仏教に取り込まれた「ヤクシー」・シュンガ王朝、バールフトの仏塔(BC2世紀);世界の博物館・講談社

 

 インド・ヨーロッパ語族のバラモン教時代にも、ガンジス河農耕地帯で「豊穣と富をもたらす女神」として、根強く信仰された「ヤクシー」は仏教に取り込まれ「樹神・山神・花々の神」となる。瀧山寺の「鬼塚」で行われる、五穀をまく儀式の主神は「薬師如来」よりも、「豊穣と富をもたらす女神・ヤクシー」の存在を強く感じます。「大地」の表象「鬼」と「豊穣の地母神」である「ヤクシー」との結びつきが瀧山寺には見られます。

 

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(18)観音堂

 

今回、瀧山寺を訪れて、もうひとつ気になることがありました。観音堂が本堂近くにはなく、外から別階段で参拝する配置になっていたのです。「聖観音」を中心とした「三尊像」は国指定文化財ではありますが、鎌倉時代に作られたもので、瀧山寺のバラモン教の影を示しただけの存在なのでしょうか。本堂左側の定位置には「ヤクシー」がいるのです。瀧山寺は稀有な寺院でした。

 こらからは「鬼」の調べを進めるために、「密教」、「修験道」、「山岳信仰」、「山岳仏教」、「バラモン教」などの関係を探る必要がありそうです。

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