神の食べ物・柿(奈良五條)
宣徳火鉢だけが置かれただけの床の間で、男兄弟四人は正座して父を待ちます。部屋一面半の上部に設えられた神棚には、数々の神が並び、正月の朝、父が炊き上げ、そなえた山盛りの白米が並び、列をなした灯明蝋燭が、隙間風に揺らぎ、強い光を放ちます。
やがて神棚の下に座した父に新年の挨拶を和します。
それが終わると、父は神棚から「干し柿」が並ぶ「三方」を頂き、子供たちに、一人一人恭しく授けます。子供たちは深く首を垂れ、神より授かった「干し柿」を元旦の早朝に食します。
これが徳島県三好市で生まれ育った私の脳裏に焼き付いた、幼い日の元旦・儀式でした。「鬼」を追いかけ、一人「念仏寺・鬼走り」に行った本年一月、日本柿の故郷ともいえる「奈良五條」でその記憶が蘇りました。
あの元旦に食した、神に頂いた「柿」とは何だったのでしょうか。「鬼」の祭りがあるところは、「柿」の産地と重なりを見せています。
(1)干し柿と種