形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

フランスパン; ロデヴ(Lodeve)とリール(Lille)・二つのパンの物語(10)

 

 

フランスパンを作った 文化要因

ガーネット象嵌(cloisonne  de grenats)・6

 サルマタイ  スキタイ  サカ パルティア

 

 

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(59)金製柄の短剣と装飾鞘(poignard dans son fourreau);金、ガーネット、カーネリアン、トルコ石・1世紀最終四半期;ウクライナ、ロストフ州、ダーチ墓地一号墳:L'OR des amazones,PARIS musees

 

それにしてもこの金属工芸技術は完成度が高いです。主題だけでなく手法までイラン語系遊牧民の「打ち出し(repousse')]による「石座(stone mounting)](参照)作りを用いながら、石留めは薄板覆輪を鏨留めする地中海文化圏の最高技術で仕上げられています。この時代に、このことが出来るのは「セレウキア」ではないでしょうか?ヘレニズム期にギリシャ人・セレウコス一世のセレウコス朝・首都であった大都市をイラン語系遊牧民パルティアが征服(BC141年)したのです。あとは、コンマゲネ王国の可能性が高いのですが、宝剣・「アキナケス剣の一種」(一般的な呼名)をまとめて見ていく時に、もう一度考えてみましょう。いずれにしても、イラン語系遊牧民のコンセプトを、見事に完成したギリシャ人・職人たちの姿が目に浮かびます。写真(52)は同じコンセプト、同じ手法をイラン語系遊牧民(サカ族)の職人が作った物でしょう、両者を比べてみてください。また。「パルティアのギリシャ化」はよく取り上げられえるテーマですが、少なくてもこの宝剣への理念(イラン語系遊牧民の理念)はパルティア滅亡の時まで変わりません。

 

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(51)金製柄の短剣と装飾鞘(poignard dans son fourreau);金、ガーネット、カーネリアン、トルコ石・1世紀最終四半期;ウクライナ、ロストフ州、ダーチ墓地一号墳:L'OR des amazones,PARIS musees

 

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(52)金製短剣柄、金、トルコ石・1世紀第二四半期;アフガニスタン、ティリヤ・テベ4号墓:黄金のアフガニスタン図録

 

動物闘争文

写真(51)の短剣・金製柄には「ラクダを襲う鷲」が表され、写真(52)の金製短剣柄には「熊と大蛇」の戦いが見られます。いわゆる、「動物闘争文」とよばれる文様です。

巽善信氏の「馬面から見た文化交流」(参照)では、「馬面」に表された文様が紹介されています。BC5~BC4世紀のものとして、アルタイ共和国の「パジリク古墳・第2号墓」、そしてBC4世紀の黒海北岸・ベルジャンスク古墳の「馬面」に「動物闘争文」が見られるそうです。この「馬面」にとどまらずスキタイ文化の解明が進むにつれて、BC8~7世紀にアルタイ地方と黒海北岸に文化の集中が見て取れるようです。両者ともに「青銅器文明」からの始まりで、同じルーツからの人々が「遊牧騎馬」の文化を形作ったと考える方が自然です。両者ともにイラン語系遊牧民であることを考えれば、コーカサス地方から北部イランでの「青銅器文明」を始めた人の移動が考えられます。西アジアから近いアルタイ地方にまず到着し、その後、黒海北岸に進出したと考えれば、両者の僅かな時間差を説明できます。「動物闘争文」はアルタイ山脈からの支流を集めて北方へ流れる「イェニセイ河」の東西に見られるのです。東方とはテュルグ(トルコ系)、モンゴル系です。

西にカザフスタン、東にモンゴル、北にロシア、そして南には中国に挟まれ、アルタイ山脈から「イェニセイ河」が始まる所に三つの共和国があります。「アルタイ共和国」、「トゥヴァ共和国」、「ハカス共和国」です。この中の「トゥヴァ共和国」の「アルジャン古墳」(BC8~7世紀)からは、黒海北岸に進出する以前でありながら、スキタイ文化と連続性を持つ文化遺物が見つかっています。

 

「 世界の歴史のニュースを和訳」より「アルジャン古墳」の記事(参照)

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(60)アキナケス剣の一種の宝剣

 

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(61)王冠の金の鹿

 

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(62)飾り付き馬具

 

 写真(60)この宝剣(アキナケス剣の一種)「トゥヴァ共和国」の「アルジャン古墳」(BC8~7世紀)から見つかったことにより、黒海北岸・サルマタイ、そしてフランク王国・メロヴィング王朝の「ガーネット象嵌」に繋がる文化の流れが、より鮮明に見えてきました。

 

 

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(63)PAUL;パン オ カンパーニュ

 

 

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(64)PAUL;パン オ カンパーニュ

 

「PAUL;パン オ カンパーニュ」は「パン ド セーグル」(参照)の逆に、小麦 80%,ライ麦 20%の「Meteil](参照)です。ルヴァン酵母の発酵は写真(64)のようにふかふかなのにどっしりとして噛み心地が最高です。ルヴァン酵母のパンは3日目くらいからが好きです。ギリシャ文明で始まったルヴァン酵母はローマ人と共に南から、北からはライ麦が、ソワソン管区(参照)でフランスパンの原型を形作ったと思います。

大地の恵みは、[KaKa](参照)に倣い丸く形作られ、クープ(切り込み)は井形で西アジアの「大地の表象」を形作ります。

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