形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

黄金伝説展 古代地中海世界の秘宝(14)       

カーネーションとチーリップ、シルフューム(参照)の融合(Rhodian periods)

 

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(22)ETORURIA;横たわるシレノスが表された飾り板;ヴィニャネッロ、クーバ墓地、第七号墓、
イタリア(BC480年頃)

 

 

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(22)ロゼッタ・カーネーション(拡大)

 

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(23)[Boteh]ブローチの花;洋彫り(Graver使用)の胡蝶貝カーネーション

「洋彫り」と「Stone Setting](1)参照

 

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(20)ミノア文明・形而下の石スケッチ(和久譲治)

 黄金伝説展(10)参照

 

カーネーションの原産地は西アジアだと言われています。事実、装飾モチーフとしてのカーネーションの花は古代ペルシャ、トルコ、インド、イスラム、の文様に多く使われています。しかし、後光のような「扇型」に表現された例は、15世紀後半~17世紀のオットーマントルコ時代まで待たねばなりません。それまでは写実的な赤い花として描かれています。そう考えると、、写真(22)ロゼッタ(カーネーション)は大変貴重な作例になります。BC480年のエトルリアで「扇型」に表現されたカーネーションが見つかったのです。そもそも、「扇型」の表現は、写真(20)ミノア文明(BC2,000~BC1,400年頃)・形而下の石スケッチで示されるように、「渦巻(蛇)に守られた大地」の表象を、西アジアから伝わってきた「生命の樹・ナツメヤシ、柘榴とクレタ(正確にはキレーネ)のシルフューム」に当てはめた表象から始まっています。「生命の樹」の表現ですから、当然、「生命を養う実」のならない花は表象されていません。

この「生命の樹」の表現方法を借りて、エトルリアでカーネーションが「扇型」に表現されたのは、もちろん「後光(蛇)」を表象するためです。しかし、他所で見ないカーネーションの表現があることは、BC480年までにエトルリアでカーネーションが栽培されていたことの証明になります。

 

 

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(24)Curnation motifs,blue-turquoise-white(Rhodian periods)

TREASURY OF TURKISH  DESIGNS;Dover

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(25)Curnation motifs,blue-turquoise-white(Rhodian periods)

TREASURY OF TURKISH  DESIGNS;Dover

 

写真(24)、(25)はローディアン(Rhodian periods;15世紀後半~17世紀の半頃)と呼ばれている、オットーマントルコ時代の陶器装飾文様です。カーネーションが「扇型」に表現されています。アナトリアに自生するチューリップの花との組み合わせです。写真(25)にそれぞれの花が表象するものを、さらに説明する表象があります。すなはち、チューリップの花には「シルフュームの実(ハート)」が付き、「生殖表象」であることを示し、カーネーションには「渦巻き」が付き、「後光(蛇)」であることを示しています。珍しい表現です。エーゲ海近海でも、それぞれの花が表象するものは、(20)ミノア文明の「生命の樹」表象ほど知られていなかったことを示しているようです。西アジアにも遅れてこのオットーマントルコ時代(イズニック生産)の文様は伝播しています。この状況から、カーネーショの「扇型」表象は、エトルリアで始まったと考えられます。それと西アジアに伝播して、ペイズリー文様のルーツ[Boteh]に使われる頃にはバラの花もこれに加わり「大地」を表象しています。「洋彫り」と「Stone setting]参照

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