形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

トピックス(9)「イシュタル」の表象(3-12)

 

 

「イシュタルの手」の変容(2)

 

 

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(10)イシュタルの銘入りの円筒印象印影、古バビロニア時代;円筒印章 東京美術

 

バビロニア南部のシュメールで、イシュタルがイナンナに変容されていたBC2,000年頃、バビロニア北部、中部にセム語族(参照)が侵入します。アッカド帝国(BC2,334~2,154),古バビロニア王国(BC2,000年頃、ハンムラビ王・BC1,792~1,750にはメソポタミアを統一)などが打ち立てられた頃、イシュタルの新たな神格が現れます。写真(2)に見られる「生命の樹」を矢羽に見立てた「戦いの女神」の誕生です。

 

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 (11)イシュタルの円筒印象印影、古バビロニア時代;円筒印章 東京美術

 

この「戦いの女神」の写真では、後にユダヤ教の「メノーラー」(写真14)になる「生命の樹と水」の表象から、「生命の水」が流れ、足下のライオンに命を与えています。写真(1)円筒印象印影に多くの動物が描かれているのと同じ概念である事が解ります。つまりアナトリア地方で強く表れる「ヴィーナス(生命の誕生)」からの影響で「平衡の水」から「生命の水」の概念が生れていることが確認できます。「エフェソスのアルテミス」の概念も写真(1)の「手(水)の光背」から生まれていたのです。「千手観音」の「千手」と同じように、「エフェソスのアルテミス」の多数の乳房の意味がこれでよく解ります。

 

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(12)イナンナの円筒印象印影、古バビロニア時代;円筒印章 東京美術

 

この「戦いの女神」は両サイドの「ナツメヤシ」と頭上の「ディンギル」によってイナンナであることが分かります。イシュタルと同じような神格を与えられるイナンナはコーカサス部族の間で「戦いの女神」にもなったことが分かります。この後、コーカサス地方の「戦いの女神」はコーカサス地方の神の特徴である「翼」を与えられ、「戦いの女神・ニケ」になっていきます。

また、この円筒印象印影の「戦いの女神・イナンナ」は「戦いの女神・イシュタル」と大きな違いが見られます。「ライオン」を見てください。

 

「座したライオンに片足を乗せるイナンナ」

聖獣としてのライオンは、主人の近くに座していることが多く、イシュタルとともにいるライオンは座し、「スフィンクス」や「狛犬」のルーツになっています。

 

 「神を乗せて立つライオン」

一方、イナンナを乗せたライオンは立っています。この神の姿は「ヒッタイト」や「ウラルトゥ」の神々の姿に繋がっています。

ここにも、コーカサス地方の部族とセム語族の違いが現れています。

ギリシャ方面のライオンも座すことが多く、主人はイシュタルの変容した女神であることがわかります。

そして、日本の「狛犬」に守られた神社の主はイシュタルかイシュタルが変容した女神であることが解ります。

 

マーライオン

黒海大洪水で多くの人を殺した「水」につながる「雨による平衡の女神」は冥界の女神の神格を持つようになります。そして、キュクラデス諸島の墓所に副葬された「テラコッタ・フライパン」に写真(15)・(16)が現れます。また、「雨による平衡の女神」の乗った「舟」の絵はアイルランドなどの墓所で見られます。日本も含めて、この世と冥界をつなぐ舟の概念はこうして生まれました。「雨による平衡の女神」に導かれ冥界に辿り着く概念です。エジプトのピラミッドの傍に大きい舟が埋められていたのも、この概念からだと考えられます。一部の考古学者がよく唱える「復活・生まれ変わり」の概念は、表象的に見る限りでは、古代に存在していません。ズールーの概念でも、一つの周期は終わり、次の周期が、トーテンポールのように、重なっていきます。周期の終わった「家」を焼く慣習は、古代の黒海沿岸や日本の縄文期によく確認されることです。

ここで確認して頂きたいのは、舟の舳先の表象です。ここには「魚」と「鳥」が見られます。写真(17)も同じ概念の「イシュタルの舟」であり、舟に乗る表象はすべてイシュタルを表しています。全体は「雨」を表す「櫛状」、舳先に「渦巻・生命の誕生」と「十字・平衡」、「手・雨」、「豚鼻・平衡」、「雨粒」、「〇に十字・雨による平衡」です。同じように「鳥」と「魚」もイシュタルの表象です。「鳥」は「二羽の鳥」の一羽・イシュタルであるのは明白ですが、「魚」はこれまでの説明ににありませんでした。しかしアナトリアとキュクラデス諸島、キュプロスなどではこれ以後によく見かけるようになります。もちろん「キリストの表象」にも用いられますが、これがルーツです。中国でも「魚・ギョ」は神話世界の神や聖人として現れます。日本でも「鯉のぼり」となって現れています。

「鯉のぼり」の部位は上から、「玉・雨」、「矢車・生命の樹、本数により豊穣、平衡の女神」、「吹き流し・雨」、「鯉・イシュタル」となります。

これで「マーライオン」の表象としての意味が良く解ったと思います。イシュタルとイシュタルの聖獣・ライオンの姿です。

ちなみににこれは「ピラミッド」と「スフィンクス」と同じです。

つまり写真(18)で示すように、ピラミッドは「雨による平衡の女神」の表象を集めて、立体的に表現した形なのです。なのでピラミッドは、「冥界の女神・イシュタル」に導かれ、女神の中で眠る場所、つまり墓です。だからイシュタルの聖獣ライオンは「スフィンクス」となって「ピラミッド」を守っています。「ピラミッド」の前に埋められたり、副葬品に現れる舟は、写真(15)、(17)の、亡き人を冥界に送るイシュタルの「舟」です。日本の「流し灯篭」や舟で供物を流す慣習は、この世と冥界をつなぐ、イシュタルの「舟」の変容だと考えます。コーカサス地方アナトリアで見つかるピラミッドは素朴な「墓」として見つかってています。

 

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(18)ピラミッドの表象;和久ノート

 

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(15)イシュタルの舟、キュクラデス諸島の墓所、mid-3rd mil.BC

     THE LANGUAGE OF THE GODDESS

 

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(16) テラコッタ・フライパン、キュクラデス諸島,キュクラデス諸島の墓所、mid-3rd mil.BC ;  THE LANGUAGE OF THE GODDESS

 

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(17)イシュタルの舟、Scandinavian rock carving Sweden,Bronze Age

         THE LANGUAGE OF THE GODDESS

 

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 (13)エフェソスのアルテミス

 

れています

 円筒印章 東京美術

 

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(14)様々なメノーラー;File:V03p532001 Candlestick.jpg

 

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 円筒印章 東京美術

 

 

 

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