形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

特別編 日本のゴルゴン (8)イシュタルの舟 (4)

弥生時代の「イシュタルの舟」ー死者を冥界に運ぶ船

 

それでは具体的に弥生時代の遺跡から見つかった「イシュタルの舟」を見てみましょう。基本的には和久ノート①雨の表象を逆さにした舟(スエーデン・ターヌムの岩絵、ブルターニュ地方の岩絵、アイルランドの岩絵など)と②リアルな舟に雨、平衡、イシュタルの表象が乗る(キュクラデス諸島の遺物、ブルターニュ地方の岩絵、スエーデン各地の岩絵など)図案になります。①は現実の舟とはかけ離れていますので、観念的な船である事はすぐに理解できます。②の舟は表象の意味が解らないと、現実の舟だと思えるかもしれません。しかし、冷静に考えれば弥生時代の舟にしては非常に櫂(オール)が多いです。何故なら櫂が雨の表象になっているからです。そして櫂の形が変です。櫂は推進力を得るためのもので、先の形は丸みを帯びるか直線的になっています。先が尖っていては水をつかめず回転しやすくなります。先の尖った槍型は、ある概念を表象した形だと思います。何故か日本だけに現れた櫂の形になります。重要な意味が込められているようなので後にします。

 

(66)2.板絵 鳥取・青谷上寺池遺跡 3.土器 岐阜・荒尾南遺跡  (前)奈良文化財研究所 副所長 深澤芳樹氏講演会資料「描かれた日本古代の舟」

 

 

2.説明は不要です。大雨ですね。中央の舟にだけイシュタルの姿があります。板に描いて副葬するのは珍しいです。 

3.中央はひたすら長く槍型の櫂が並びます。もはや舟は関係なく槍型の雨の表象なのかもしれません。右下には楔形▽の表象を持つイシュタルの姿があります。左下には

、雨表象の旗かマストがあり、中央に鳥そして鳥の背中にはメイポールの様なものが載っています。丸に雨で「雨による平衡」を表しています。このポールの先端と帆先は、よく見えませんが、キュクラデス諸島の「鳥の足を持つ魚」(参照)に似ています。この壺絵は間違いなく死者を冥界に導く舟であり、骨壺の壺絵です。

 

 

(67)(前)奈良文化財研究所 副所長 深澤芳樹氏講演会資料「描かれた日本古代の舟」

 

10~13は墳墓から出土しているので、日本でも舟を副葬する慣習があったことが理解できます。前述のイラクの舟(参照)と同じです。

7・唐古・鍵遺跡のこの舟は死者を冥界に送る「イシュタルの舟」なのでしょうか。イシュタルの変容した・丸ー雨、三角ー女神が三体乗っています。大きなイシュタルと小さな天照大神そして「Camonica Valleyの岩絵」(参照)で男根を持ち戦士になったイシュタルです。イシュタルが手にしているのは二枚のリボンと十字の表象、いずれも平衡の表象です。男根を持った戦士姿が舟のシンボルが載る帆先にいます。戦勝祈願の様な気もします。

8.はヨーロッパでも見かける平衡の表象を持った冥界の女神イシュタルです。

9.②の「イシュタルの舟」です。

 

(68)和久ノート

14.はエジプトの彩文土器の影響があります。アフリカの平衡表象は独特なものがあるので次回まとめます。

このように弥生時代の遺跡、特に墓所から見つかる船の絵は死者を冥界に送るイシュタルの舟で、コーカサス地方の部族が黒海大洪水で移動していった場所で見つかるものと同じ構図、概念が見られます。弥生人の正体が見えてきました。

しかし、不可解な櫂(オール)の形を探らなければいけません。なぜ日本だけに現れたのでしょうか。

 

 

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