形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

特別編 日本のゴルゴン (8)イシュタルの舟 (5)

りょうにいく福井県井向でみつかった弥生時代の銅鐸に描かれたイシュタルの舟

 

(69)銅鐸絵 福井県井向 弥生時代

 

雨の表象を持ったイシュタルの舟が三艘です。先頭の舟は十字・平衡の表象を立てています。でも様子が違います。死者は自分で漕いでいます。右にいるイシュタルは舟を迎えているようです。ではここは冥界でしょうか。コーカサスの概念で冥界が描かれたことはありません。ここでは鹿を狩る営みも描かれています。

疑問は上部中央の二つの表象で解き明かされます。写真(70)は二つの渦巻がVを作っています。両サイドに丸みのあるVは後にスラブ語にVとして取り入れます。間違いなく写真(71)を含めて渦巻の概念を持った「平衡・V 」です。もう一つは写真(72)、(73)にある円環の重なりを表す表象です。「祖先」を表します。表象が示すのは、祖先が生き生きとして生活をしている場所なのです。

しかし、やっぱり違和感があります。イシュタルの舟は死者の魂を冥界に運ぶのですから、人の姿はありません。ましてやイシュタルが乗ることなく自分で漕ぐこともありません。舟もよく見ると、舳先を左に向けています。斜線の表象は雨ではなく、具象的な波なのかもしれません。弥生時代のイシュタルの舟に特徴的な槍型の櫂もついていません。

そして銅鐸は「豊穣と多産」を願って作られるものです。漁にいく舟と解釈するべきでしょう。

そうすると、ここにはコーカサスの概念はなく、すべて「Cucuteni-Trypillian culture」と同じ社会と概念が描かれていることになります。初めてのことなので戸惑いました。古墳時代になるとエジプト(下流域やシナイ半島)の彩文土器と同じ「イシュタルの舟」が描かれるのです。ですけれど、弥生時代にアフリカ部族の文化「Cucuteni-Trypillian culture」と同じ社会と概念だけが描かれていることは初めて見ます。驚きです。ですが、表象は一貫性を持ちます。

すべて「ズールーの概念」に沿って説明します。マジシ・クネーネが書き残した「アフリカ創世の神話」の概念です。

真ん中の二つの表象は上記のとおりです。「渦巻概念のV」は「生命の平衡」つまり部族の生命が発展していくことを祈願しています。「円環の重なりを表す先祖の表象」(縄文時代の集落にある大木の塔)の右側に不完全な人形として描かれているのはここに埋葬された先祖たちだと思います。「ズールーの概念」では死者は先祖のゾーンに入り、生きている部族を助け導くために、神と人間の世界を繋ぎます。生きている人には見えない神が見えるため、部族を助けるように神に訴えたりします。先祖は常に部族と伴にいます。

中央の二つの表象の左には犬がいます。よく見ると「バセンジー犬」です。アフリカ・コンゴ原産のこの犬は、「Cucuteni-Trypillian culture」においては「ジャンプして雨雲を呼ぶ」犬と信じられています。雨をもたらし作物の「豊穣」を呼びます。

鹿も雌雄がしっかり描き分けられています。Camonica Valleyの岩絵(参照)とは違います。左側には色々な動物が描かれています。馬もいるようです。

それと、舟の櫂が槍型にはなっていません。日本にだけ現れた「槍型の櫂」は「ズールーの概念」と「コーカサスの概念」が融合した形だと思っているのですが、それはサルデーニャ島などで起こったことに原因がありそうです。次回にまとめます。この銅鐸絵を描いた部族は「コーカサスの概念」と融合することなく「ズールーの概念」だけを持ち続けて、日本の弥生時代に現れたことになります。もちろん「Cucuteni-Trypillian culture」が「Yamuna culture」の部族によって滅ぼされたのはBC2,750年頃で、「Maykop culture」(BC2,500年頃)より少し早いので時間的な整合性はあります。彼らは「Dorians」として南下し、「海の民」とも合流しています。

そして「槍型の櫂」のヒントにもなりますが、「Cucuteni-Trypillian culture」と同じ社会を取り巻いているのは、初めて見る連続文です。考えられるのは「ズールーの盾」で作った「平衡の表象・ジグザグ模様」です。写真(74)Solutrean Spear Points(槍頭、この月桂樹型ポイントはアフリカの新人(ホモサピエンス・サピエンス)にとって象徴的な形です。その伝統はズールーの部族にも受け継がれています。彼らはこの槍や盾でズールー戦争も戦いました。今もって彼らの誇りにしている形なのです。

そして最後は「天の王女」がすべてを包括して、相似形の宇宙の一つになります。

神も、先祖も、男も、女もすべてを一つにして包みます。

「ズールーの概念」では死者はどこにも行きません。

 

 

(70)壺の蓋 Cucuteni-Trypillian culture Rumania THELANGUAGEOFTHEGODDESS

 

(71)Cucuteni-Trypillian culture Wikipedia

 

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(72)Tartaglia clay plate(タルタリア粘土板); BC5,500~BC4,500(新石器時代), 

           Tartaria,Alba County,Romania(ルーマニア

         Discovered by the  archaeologistTHE Nicolae Vissa in 1961

       Wikipedia

 

 

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(73)哲学と信仰;(95)Tartaglia clay plate(タルタリア粘土板) の解読;和久譲治

 

 

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(74)Solutrean Spear Points(槍頭)22,000-17,000BP

 Crot du Chanier,Solutre'-Poully,Saone-et-Loire,France;Wikipedia

「 ソリュートレ文化」に特徴的な石器、アフリカの新人(ホモサピエンス・サピエンス)が発展させた石刃技術「押圧剥離」が細やかに施されています。月桂樹型ポイントは「ソリュートレ文化」を代表する形態です。

 

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(75)ズールー部族の盾と槍(月桂樹型)のエンブ)ム;Zulu Warrior jp.clipartio.com

 

 

 

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