形而下の文化史

表象文化史・ジュエリー文化史・装飾文化史

 

黒海大洪水(5)

神学から見た黒海大洪水

燃え続ける火の意味

 

ゾロアスター教;メアリー・ボイス、山本由美子訳(講談社)の第二章・「創造と三つの時」にゾロアスター教の起こりを暗示する「神話」として次のような描写があります。

{彼は石でできた大空の下半球から暴力的に侵入してその完璧さを損なった。それから水のなかを駆け上がり、その大部分を塩水に変え、大地を襲って沙漠にした。ついで植物を枯らし、「唯一に創られた牡牛」と「最初の人間」を殺した。最後に彼は、七番目の創造物たる火を攻撃して、それを煙で穢した。このようにして彼は、すべての良い創造を物理的に損なったのである。}

これはもういかに読もうとも、BC5,600年頃、栄えた文明のあった淡水湖の黒海に地中海の塩水が流れ込んだ、いわゆる「黒海大洪水」の描写です。文明の火を塩水によってかき消された出来事を「悪」の攻撃と考え、「燃え続ける火を豊饒の大地の安寧」として「火」の神格化が始まったのではないでしょうか。後のアカイメネス朝ペルシャ時代に、ゾロアスター教の教義は整う訳ですが、BC5,600年頃から約5,000年の時間の中で、拝火の教義は作られていったのです。ですから、その大半の時間では、「ゾロアスター教」ではなく「神聖な火を祀る儀式」として受け継がれていったはずです。バラモン教にはじまり、あらゆる「火の神・火の儀式」の起源だと考えます。

 

 

 

 

ついでながら

黒海が塩水化「ついで植物を枯らし」で気になるのですが、カルトヴェリ語族のラズ語領域が稲作の原産地だと私は思っています。カスピ海のイラン領域の稲作は同じルーツがあるはずです。科学的調査が必要です。稲作の伝播経路はここから東西、北方へと広がっています。稲作の伝播のハブです。黒海海底遺跡が発掘されるまで証明は出来ないでしょう。昔のイラン・稲作農家の写真を見てください。私が小さいときに見た日本の里山稲田と同じ風俗で、同じ農作業が行われています。「どてら」や「こたつ」なども同じです。

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